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特集

IT活用支援の決め手は、資金管理と原価管理

  • 2023年2月1日
  • 木村治司税理士事務所 様

会計システムによるIT化支援を、関与先企業全体の約97%に実施!
業績管理体制の構築支援として、「資金管理」と「原価管理」の支援を実践しています。支援した企業の経営改善計画策定が金融機関から評価されて、迅速な融資実行を実現しています。

会計のIT化で「経営支援」と「金融支援」が定着

Q : 認定経営革新等支援機関に登録されたのはいつですか

A : 認定支援機関制度が創設された2012(平成24)年に第1号認定を受けました。 当事務所では、関与先企業の業績管理体制構築のために、会計システムの導入を推進しており、現在は、関与先企業の9割超に会計システムを導入いただいています。この会計のIT化により、経営改善計画の予算登録と毎月の予算実績管理および資金管理業務を支援しています。

なお、当事務所では関与先企業の了承を得て、資金融資を受けている金融機関に、毎年、決算書および申告書を電子データで提供しています。金融機関からも評価してもらっているのは、融資の判断に必要な決算書等のデータが電子で入手できるようになった点、そしてその決算書等が税理士の監査を受けているものだという点です。この一連の資金管理面での関与先支援と金融機関との橋渡し支援が当事務所の強みで、金融機関との関係強化に繋がっています。

関与先企業の会計のIT化を進めたことで、「経営支援」(適時正確な会計帳簿に基づいた正しい会計数値の提供・分析・改善提案)と「金融支援」(経営者と金融機関の橋渡し役)が具体化し、当事務所の標準業務として定着しています。

Q : 経営改善計画策定支援の取り組み状況についてお聞かせください

A : 今までに支援した企業数は、経営改善計画策定支援事業18件、早期経営改善計画策定支援事業31件です。

その中には、関与先ではなく、金融機関から依頼された企業も含まれています。企業が独自で作成した決算書と経営改善計画だけでは融資の判断材料として乏しく、第三者として会計・税務の専門家に経営改善計画の作成を支援してもらうことで信頼性を確保することが金融機関の目的でした。
実際に経営改善計画策定のために過去の決算書等を精査していくと、ある企業のケースでは、P/L科目がB/S科目に入っているという勘定科目の設定間違い等が露見し、当事務所で正しい決算書に修正して改めて経営改善計画書を作成しました。 金融機関から見て信頼できる決算書と経営改善計画書が提出されたことで、この企業には無事融資実行となりました。これは認定支援機関として、金融機関と連携して経営改善計画の策定を支援した成功事例だと言えると思います。

また、2022(令和4)年4月1日に、「早期経営改善計画策定支援事業(ポスコロ事業)」が見直され、「経営者保証解除枠」が新設されましたが、この経営者保証の解除に、ある関与先と一緒にチャレンジしています。
過去には金融機関との綿密な打ち合わせを重ね、借り換えと併せて経営者保証を解除できたことが2件ありましたので、今回の改正を機に、経営者の安心と安全を確保するためにしっかり取り組みたいと思っています。

木村治司税理士事務所 外観

会計システムもクラウドの時代

Q : 事務所のIT化支援の取り組みについて現在の状況を教えてください

A : 会計システムによるIT化支援に関して言えば、関与先企業全体の約97%に導入いただいています。日々の記帳業務をIT化するだけでも適時正確な会計処理や省力化のメリットがありますが、当事務所では、会計を後追い型の申告のために仕方なく行うものにはしたくないと考えています。会計システムを導入いただいている企業全社に、予算登録による業績管理や資金管理に役立てていただく支援を必須としています。

一方で課題もあります。当事務所は比較的先行して会計システムの導入を進めてきたので、現在関与先企業の利用するシステムは旧タイプのスタンドアロン型のものが大半です。今では、どの会計システム開発ベンダーでも、新たに開発提供されるシステムはクラウド型になっていますので、クラウド型システムへの移行は当事務所が早急に取り組むべき課題であると考えています。

Q : システムをクラウド型にするメリットは何であるとお考えですか

A : 事務所は、経営方針として以下の2項目を掲げています。
(1)業績管理体制の構築支援(=会計システムの導入支援)を標準業務とする
⇒(A)資金管理(資金繰り実績表の活用)と(B)原価管理(部門別採算管理体制の構築)を支援
(2)認定支援機関の役割として「経営支援」と「金融支援」にしっかりと取り組む
⇒地域金融機関との連携強化と経営者の資金管理能力向上支援に努め、経営者と金融機関に橋を架ける

会計システムにクラウド型を採用すると、パソコンとネット環境さえあれば、経営者自らがいつでもどこでも自社の経営数値を見ることができます。上記の方針は、関与先企業のDX化支援を見据えたものでもありますが、クラウド型システムへの移行は、これらを推し進めるためには不可欠なIT環境だと考えています。

もう少し具体的にクラウド化のメリットを紹介すると、
1. 時間や場所を問わず利用できる
2. データ共有が簡単にできる
3. データのバックアップが不要(安全)
4. コストを抑えやすい
5. 事務所にとってはバージョンアップの手間が減少
等が挙げられますが、特に、2. データ共有が簡単にできる は大きなメリットとなります。

なお現在、改正電子帳簿保存法への対応として電子データ保存の支援を実施していますが、希望する関与先企業には、クラウド型システムへの移行も併せてご支援しています。
ただ、今後は全ての関与先企業にクラウド型システムへ移行していただくことが必須と考えていますので、今のまま、希望するところ、できるところから徐々に取り組もうとは考えていません。説明の内容、方法、ツール、所内研修等の準備を整え、近い将来、短期決戦で、全関与先のクラウド移行に取り組む予定です。

資金管理と原価管理で 業績管理体制の構築を支援

Q : 業績管理体制の構築支援について具体的な取り組みをお聞かせください

A : 先ほど経営方針(1)でご紹介したとおり、業績管理体制の構築支援として、「(A)資金管理」と「(B)原価管理」の二つの支援を掲げています。

(A)資金管理の支援については、「資金繰り実績表を活用していただくこと」を柱としています。
例えば、正しい資金繰り実績表を作成するために、会計システム導入時の初期設定の段階で、正しく資金科目を設定すること等に気を付けたIT化支援を心がけています。また、仕訳の辞書機能を活用いただくことで、関与先企業の毎月の事務処理負担を少なくするとともに、仕訳計上時に資金取引かどうかも含めた正しい入力が行われるように支援しています。

正しい資金繰り実績表を作成することに注力し、毎月の監査時に確認してもらうことで、経営者に利益が出ているのになぜ資金不足が起きているのか等、資金に関する正しい理解と必要な対策意識を持ってもらえるようになります。
この支援を継続してきたことで、関与先の資金繰りへの知識と理解が深まり、今では日常的な仕訳計上において資金取引かどうかに迷うことはなくなってきています。まだまだ投資の処理や経常収支、財務収支の考え方等で悩まれることはありますが、関与先の資金管理能力は格段に高まりました。

(B)原価管理の支援とは、「部門別採算管理体制の構築」を支援することです。
会計システムというITを使うからには、単純に全社の業績を把握してもらうだけでは物足りません。会計は、IT化することによって業績改善に役立つ資料を提供するツールとなります。
少し工夫をするだけで、手間をかけずに企業の弱点や問題点を浮き彫りにし、何を改善する必要があるのか等、経営者の意思決定をサポートする武器に生まれ変わるのです。会計システムを利用していない企業でもできないことはありませんが、同じことをやろうとすると、時間も手間も膨大なものとなり中小企業の体力では実現は非現実的です。

当事務所では、会計を企業経営の武器とするために原価管理(部門別採算管理体制の構築)を支援しています。具体的には、支店別や部署別、商品・サービスのグループ別、得意先別の粗利益管理による業績管理を推奨しています。単位を細分化して粗利益等を比較していくと異常値や問題の所在が明確になります。細分化したデータを見てもらえば、どこが経営を圧迫しているのかは理解してもらえます。中小企業では問題の原因をどう取り除くのか、簡単に解決できないことも多くありますが、税理士事務所は、まず問題点が把握できる会計データの作成を支援すること、そして問題点の解決に取り組む経営者の良き相談相手であるべきだと考えています。

また、詳細な部門別データを簡単に会計システムに取り込む方法として、販売管理システム等からCSVデータを切り出し、会計システムに読み込む仕訳連携の支援にも取り組んでいます。

例えば、飲食店の事例ではPOSレジと会計システムとを連携することで店内飲食とテイクアウトを分けて業績を管理したり、システム開発会社の事例では、プロジェクト毎の工数管理が必要な部門と研究開発部門など当面利益を出しにくい部門を分けて管理したりしています。

関与先で使用しているPOSレジの種類やそこからどのような情報が得られるのかを確認し、検証していくのも当事務所の役割と考えており、今後はさらに細分化し、商品別・時間別での売上情報を財務情報に取り込んだ業績の管理ができないか等も検討しているところです。

経営支援、金融支援が税理士の新たな本来業務

Q : 最後に、IT化支援には今後どう取り組んで行かれるのかビジョンを教えてください

A : 税理士に求められるのは、税理士法第1条の税理士の使命に定められていることに加え、税務・会計を通して中小企業の永続的な発展に寄与し、地域社会に貢献することだと思っています。
経営革新等支援機関の認定を受けた税理士事務所は、税務業務のみならず、会計・経営支援・中小企業金融の専門家として国からの期待を背負っていますし、これこそ税理士が取り組むべき新たな本来業務ではないでしょうか。

ITの技術革新は今後さらに加速度的に進むと予測されますが、それは、正しい会計数値による経営改善をより後押ししてくれるものになるはずです。会計や税務に関係するIT技術を有効活用してもらうことは税理士事務所の役割であり、ITに強いことや最新のIT情報の収集、技術の習得は、税理士事務所にとって今後の必須事項です。

また、地域金融機関と連携し、中小企業経営者に金融情勢の知識を提供したり、適切な資金調達や資金の活用を促す金融支援を行うことも経営革新等支援機関の役割であり、税理士が本来取り組むべき業務であると考えています。

これからも中小企業の成長・発展のために、ITを駆使し、税理士の使命、認定経営革新等支援機関の役割を踏まえた支援を心がけ、地域経済の発展に貢献してまいりたいと思います。

木村治司先生

[企業DATA]
木村治司税理士事務所は、『経営者と共に考える』という基本スタンスで、中小企業の永続的な発展を支援

静岡県沼津市本田町9-16
URL:https://kimura-ao.tkcnf.com/

開業: 平成4年10月1日

[認定経営革新等支援機関について]
登録年月: 2012(平成24)年11月5日
登録理由: 経営革新等支援業務 / 経営改善計画書策定
取材日: 2022(令和4)年11月16日