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Interview

インタビュー

今こそ実践!
中小企業のIT化支援は
会計事務所のブルー・オーシャン


認定支援機関におけるIT導入支援の取り組み
増山会計事務所 様 [ 茨城県 ]
2022.7.15


中小機構では、中小企業のIT導入を支援する情報発信サイト「ITプラットフォーム」を開設し、認定経営革新等支援機関の税理士法人がIT化支援に取り組んでいる事例をご紹介しています。今回は、茨城県水戸市の増山会計事務所(所長:増山英和先生)の取り組みを取材しました。

増山会計風景



地域支援機関との連携を強化
ワンストップサービス型の事務所経営を目指す

Q : 認定支援機関に登録されたのはいつですか。

A : 認定支援機関制度が創設された2012(平成24)年に第1号認定を受けました。 中小企業を取り巻く環境が多様化・複雑化する中において、会計事務所は関与先である中小企業の財務や経営状況を把握できる立場にあることから、経営者にとって最も身近で親身な相談相手となることができます。
当事務所は、地域の支援機関等との連携を強化して、経営に関する相談にも対応できるワンストップサービス型の体制作りに力を注いできました。認定支援機関制度の趣旨も当事務所の方針と一致しており、国が認める金融と経営支援の一体的取組の推進に賛同し、積極的に当該事業に取り組んでいます。

増山英和先生



Q : 経営改善計画策定支援の実践状況についてお聞かせください。

A : 現在、経営改善計画策定支援事業12件、早期経営改善計画策定支援事業24件の支援実績があります。
経営改善計画書を作成すると、決算書を見ただけでは分からない会社の細かな動きまで視覚化することができます。会社の現状を図や表を交えて表現することで、経営をより深く見直し、弱点を知ることができるので、経営改善計画書の作成指導を通して、それぞれの会社にあったアドバイスをさせていただいています。

また、作成した経営改善計画に基づく業績検討会の開催を通して、中小企業の健全な発展に貢献することを当事務所の経営助言業務と位置付けています。

生産性の向上は手間とミスの排除
業務データの仕訳連携が解決の鍵

業務データの会計システムへの仕訳連携の事例について、監査課の佐々木貴哉氏にお聞きしました。

Q : 業務と会計の仕訳連携支援に至るきっかけについてお聞かせください。

A : きっかけは、会計システム会社から毎月関与先のA社に提供されている機関紙に掲載された自動車整備工場の事例記事をA社社長が読まれたことでした。

A社では、以前よりブロードリーフ社(※1)の業務システムを導入されていましたが、見積書・請求書の発行以外では使っておられませんでした。
事例記事には、ブロードリーフ社のシステムをうまく活用すれば、売上・原価管理、売掛・買掛管理、仕入管理、在庫管理等の様々な管理が容易になるばかりか、業務データをCSVファイルで切り出せば、会計システムに読み込ませて仕訳連携することが可能だと紹介されていました。

A社の社長は、今使用しているシステムをうまく活用すれば、業務の効率化や生産性向上につながるだけでなく、経営判断に役立つ資料がタイムリーに確認できるはずだと考え、当事務所に仕訳連携の支援を依頼されました。

(※1)ブロードリーフ社は、自動車整備工場や部品商など自動車アフターマーケットの事業者を中心に、機械工具商、携帯電話の販売代理店、旅行会社をふくめ約30,000社ものお客さまに対し、事業創造を支援する業務アプリケーションを開発・提供する他、異業種を結ぶネットワークサービスなど業界唯一のサービスを提供しています。出典:ブロードリーフ社HP



Q : 具体的にどのように支援されたのかお聞かせください

A : 最初に取り組んだことは、仕訳連携の仕組みを作るために以下の3者の協力を得ることでした。

① A社の経理担当者
② ブロードリーフ社(業務システムの機能や操作方法の支援)
③ 会計システム会社(業務データの加工、会計システムへの読み込みの支援)

上記3者に当事務所の私を加えた4者でプロジェクトチームを発足し、仕訳連携による業務の効率化、生産性向上、経営判断に役立つ資料の作成を目標に、取り組みをスタートしました。

仕訳連携をサポートされた監査課の佐々木貴哉様



Q : 業務と会計の仕訳連携支援の具体的な手順をお聞かせください。

A : 4者で相談し、以下の手順で進めました。

第1ステップ 会計処理の見直し
自社で仕訳入力がしっかりでき、内容を把握しやすくするために、仕訳入力方法及び使用勘定科目を変更しました。まずは必要項目が容易に把握できるような会計を目標に改善していきました。以前はしっかり仕訳入力していても、後から見返すと内容を把握しにくい状態だったので、入力する際はスマートに、内容を確認する際は美しく・見やすい会計をテーマに改善を実施しました。

第2ステップ FinTech(フィンテック)サービスの活用
効率化と生産性向上に一番貢献したのは、会計システム会社のFinTechサービスの一つである銀行信販データ受信機能の活用です。このサービスを導入したことで入力時間を劇的に減らすことができましたし、手入力が減ったことで入力ミスもなくなりました。

第3ステップ 経営判断に役立てる
生産性向上にとどまらず、連携したデータが経営判断に役立つことが重要です。 仕訳連携にチャレンジすることで始まったDX化支援ですが、スマートフォンでもタイムリーに業績を把握できるようになり、少しずつDX化が進んできたのではないかと思います。

Q : 仕訳連携の立ち上げに要した期間や良かった点ついてお聞かせください。

A : 具体的には、本格的に運用できるようになるまで半年ほどかかりました。
やはり最初はトラブルや試行錯誤の連続でしたが、経理担当者が分からない点や困った点についてはチャットを利用して解決していきました。チャットでの連絡は、当初は毎日何度も行うことになりましたが、事務所にいながらタイムリーに解決できるコミュニケーションツールとして威力を発揮しました。

Q : 業務と会計の仕訳連携の際に工夫した点や留意事項についてお聞かせください。

A : 業務システムから出力されるCSVファイルは、1データに302項目ありました。その中から仕訳に必要な項目を抽出し、会計システムに取り込むわけですが、初期の頃は、勘定科目の設定ミスや消費税の端数処理等の問題が発生する等、想定通りの正しい連携ができず、問題解決力を試される日々でした。

トラブルを乗り越えてみて、一番大事なのは業務システムに正しく入力することだということに気づきました。今では、入力データにはほぼ間違いがない状態にまでレベルアップしています。

また、極限まで自動化するということが目標でしたので、部品仕入先に仕入データを改良していただいたこともありましたし、同業他社のやり方も研究しました。工夫した点は、管理会計に活かすため、部門ごと、店舗ごとの業績が把握できるよう、あえて細やかな設定を行ったことです。

Q : 今回の成果や今後の展望についてお聞かせください。

A : 仕訳連携前の会計システムの月間仕訳枚数は600枚程度でしたが、業務システムからの仕訳連携後は月間3,600枚程度、約6倍に増加しました。経営情報がより詳細に備蓄されるようになったわけです。
しかも、会計システムに手入力する仕訳数は逆に大幅に減りました。加えて、連携仕訳に入力ミスが起こらないので業務効率も格段に向上しました。

業務効率の向上だけでも大きな成果だと思いますが、何より良かったのは売上に関する詳細なデータが取れることで業績把握が容易になったことです。部門ごと、店舗ごとに業績を把握することができ、意思決定が早くなりました。

仕訳連携がうまく機能し始め、会計が正しく把握できるようになると、会計データ上の売上(納品ベース)と経営者の頭の中の売上(受注ベース)にズレが生じていることが分かるようになりました。そこで、次のステップとして、受注ベースでの業績管理資料の作成を検討しています。

なお、A社は中堅クラスの企業ですが、仕訳連携は業種や規模に関係なくどの企業でも対応可能です。今後は小規模事業者も含め、もっと多くの企業の仕訳連携を支援したいと考えています。

IT化支援は
全員で取り組む体制作りから

Q : 事務所のIT化支援の体制についてお聞かせください。

A : 当事務所では、顧問先企業に会計システムを利用した会計処理を推奨していますが、顧問先企業から会計システムの問い合わせがあると、従前はその企業の担当者が対応していましたので、顧問先へのタイムリーな回答ができませんでした。そこで、内勤者である総務部門で「システムサポートチーム」を設立し、担当者が不在でもシステムの問い合わせに対応できる体制を構築していきました。

当事務所には複数の関連会社がありますが、そのすべてに会計システムを導入し、その会計システムを「システムサポートチーム」全員が運用する体制にすることで、自然に会計システムに強い総務部門(システムサポートチーム)ができ上がりました。今では、内勤者の誰もが顧客からの会計システムへの問い合わせに対応できる体制になっています。



IT化に敏感な企業ほど業績も好調

Q : 改正電子帳簿保存法の対応支援についてお聞かせください。

A : 当事務所では、改正電子帳簿保存法の対応支援のため、電子取引の実態調査アンケートを昨年末に実施しました。電子取引の種類を12に分類し、それぞれの利用状況を確認したところ、アンケートに回答いただいた148社のうち、30%以上の企業が利用している電子取引が以下の4項目でした。

① インターネットサイトで物品購入している(72.8%)
② 電子メールで請求書や領収書を受領している(46.5%)
③ クレジットカードの利用明細をインターネットで入手している(34.2%)
④ 公共料金は紙の請求書がなく、インターネット上で確認している(30.4%)

また、電子取引に積極的な企業とそうでない企業との黒字割合を調べてみたところ明らかな相関関係がありました。


上記のグラフの通り、多くの電子取引を採用している企業ほど業績が好調なところが多いという傾向が見て取れました。回答いただいた企業の平均黒字割合は73.0%ですが、電子取引に全く対応していない企業の黒字割合は64.0%と9ポイント悪くなります。反面、6件以上の電子取引に積極的に対応している企業の黒字割合は94.7%で1社を除くすべての企業が黒字という結果でした。

IT化に敏感な企業ほど業績も好調であるとアンケート結果は明らかに示しています。当事務所は顧問先企業の黒字化を支援することを最重点方針としていますので、電子帳簿保存法への対応はもちろんのこと、IT化支援にもますます積極的に取り組みたいと考えています。

インボイス制度は記帳代行業務を駆逐する

Q : インボイス制度への対応についてお聞かせください。

A : 当事務所では、インボイス制度への対応として、2021年の年末に、年に1回領収書などを事務所に持ち込んで決算申告を依頼される数件の会社に対し、顧問解約の通知書を郵送させていただきました。インボイス制度が導入されると会計事務所が記帳を代行して決算申告を行うことがほぼ不可能になるからです。
その理由は、以下の4項目に代表されます。

① 一つの「適格請求書」から、複数の科目や部門にまたがる仕訳をする場合、消費税額を手計算しなければならない。
② 取引入力のつど「免税事業者との取引における仕入税額控除の経過措置」の適用判断を行わなければならない。
③ 上記②の経過措置の運用時に、消費税額相当の8割を手計算しなければならない。
④ 電子取引データの領収書を印刷して事務所に提供してもらう必要がある。(電子帳簿保存法では電子保存が義務付けられている)

通知書を受け取った企業から私に直接問い合わせが入りましたが、解約せざるを得ない理由を丁寧にご説明すると、今まで頑なに会計システムの利用を拒んでおられた社長も納得され、当社の推奨する会計システムを導入し、顧問契約を継続することになりました。

会計システムの利用は業務の効率化や省力化のためだけではありませんが、インボイス制度の導入により、企業の会計システム利用は必須となりました。近い将来、会計処理を手書きで行うことや会計事務所が記帳代行で決算申告業務を行うことは、完全に消滅してしまうと考えています。

業務と会計の仕訳連携こそ
会計事務所のIT化支援

Q : 事務所にIT化支援体制を根付かせるための方策があればお聞かせください。

A : 当事務所では、まず顧問契約書の改定を行いました。業務内容の細分化を行い、業務システムと会計システムの連携支援業務は、別途報酬をいただくことにしました。
連携する内容によっては、その企業の担当者だけでなく別のスタッフとチームで対応することもあり得ますし、会計連携は一度設定したら終わりではなく、仕様変更や不具合への対応が重要です。無償で請け負ってしまうと、そういった事後対応への責任感が薄れます。
顧問先の経営者からは、この仕組みが生産性の向上や経営判断に役立つと分かれば、報酬を払ってでも支援してもらいたいと言っていただけています。

中小企業のIT化は多岐に渡りますが、会計事務所による中小企業へのIT化支援は、専門分野である会計に関連した業務を中心とすべきだと思っています。中でも、業務システムから会計システムへの仕訳連携支援にこそ、会計事務所のリーダーシップが求められているのではないでしょうか。
残念ながら、会計事務所でこの仕訳連携サービスを積極的に取り組んでいるところはまだ少ない状態ですが、逆に、まだ手付かず状態(ブルー・オーシャン※2)の今だからこそ取り組みを始める価値があると言えます。

昨今のIT技術の進歩やクラウド環境の普及により、技術的には業務システムからの仕訳連携支援は簡単にできるようになって来ました。
ただし、業務システムとの正しい仕訳連携を実現し、継続的に運営していくには、関係部署との連携や業務や体制の見直しが必要であり、「ITを活用して生産性や業績を向上させる」という経営者の強い意識が必要不可欠です。
中小企業の経営者の良き相談相手であり伴走者として、経営に役立つIT導入支援を提案し、共に成長・発展し、地域の経済社会に貢献できる会計事務所でありたいと願っています。

(※2)ブルー・オーシャン戦略とは、血で血を洗うような競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海)」とし、そこから可能な限り脱却して、競争のない理想的な未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海)」を切り開くべきだと説いている。出典:ウィキペディア





[企業DATA]
増山会計グループは、増山英和税理士事務所を中心に、顧問先企業のニーズに応じて皆様をバックアップする増山総研、増山商事、および専門集団によって構成。

増山会計事務所

〒310-0851 茨城県水戸市千波町1258-2 増山ビル2F

設立:昭和48年
URL:https://www.ma-g.co.jp/

[認定経営革新等支援機関について]
登録年月: 2012(平成24)年11月5日
登録理由 : 経営革新等支援業務 / 経営改善計画書策定
取材日: 2022(令和4)年4月6日



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