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特集

消費税法改正によるインボイス制度の導入は中小企業のDXを加速させる

  • 2021年10月5日
  • 税理士法人 報徳事務所 様

インボイス制度導入と改正電子帳簿保存法対応を契機として、請求書等のデジタル化(ペーパーレス化)は急速に進む。経理事務や総務業務は、紙媒体から電子媒体に変わることで、大幅な業務の効率化や省力化をもたらす。電子インボイスの普及は、「税務・会計によるDX」に繋がる。

今、なぜ、「インボイス制度セミナー」の
開催なのか?

Q : インボイス制度セミナー開催の目的についてお聞かせください。

A : 当事務所には戦略広報委員会が設置されており、一年前には既に、2021年9月にセミナーを実施することが計画されていました。
2023年10月には改正消費税法が施行され、インボイス制度(適格請求書保存方式)がスタートしますが、それに先立って2021年10月1日より「適格請求書発行事業者の登録申請書」の受付が開始されるため、その受付開始前に情報発信をしておくべきだと考えたのがセミナー開催のきっかけです。

適格請求書発行事業者の登録は、インボイスを発行するすべての事業者が行っておく必要があり、当事務所の全顧問先に周知しておく必要がありました。
また、免税事業者のままでは適格請求書発行事業者に登録できないため、免税事業者は、課税事業者を選択するかどうかの検討も必要となります。その場合、事業内容や顧客層等を考慮して、免税事業者のまま事業を行うのか、課税事業者(インボイス発行事業者)として登録するのかの判断をしてもらう必要があります。そこで、社長や経理担当者の方々に、意思決定に役立つ正しい情報をいち早くご案内する「インボイス制度の事前対策セミナー」と位置づけました。

 なお、当初は会場に参加者を集めての開催を予定しておりましたが、コロナ禍の緊急事態宣言中での開催となったため、急遽Webセミナー形式に変更して開催しました。

テレワークの浸透で
ペーパーレス化は必須要件に

Q : セミナーの構成と説明のポイントについてお聞かせください。

A : セミナーは3部構成で開催しました。
第1部で、改正消費税法(インボイス制度)への対応として、実務上準備しておくべきポイントについて説明しました。インボイス発行事業者になれば、請求書の様式、各種システムの変更など多岐に渡る見直しが必要となるので、制度施行前に準備、検討していただく課題について解説しました。

第2部では、「税務・会計のDXのポイント」をテーマに、電子帳簿保存法の改正による税務・会計業務のデジタル化の留意点について詳細を解説しました。2022年1月1日より施行される改正電子帳簿保存法では、帳簿書類を電子的に保存する際の手続き等が抜本的に見直され、より利用しやすくなるように緩和されるので、そのデジタル化(ペーパーレス化)の留意点についてご説明しました。

第3部は、第2部の電子保存の実例として、スキャナ保存制度の要件に対応したクラウド型のストレージサービスをご紹介しました。

Q : セミナーの参加状況および参加企業からの感想等をお聞かせください。

A : 110名の申し込みがあり、99名にご参加いただきました。
案内状は顧問先を中心に100社程度に発信しましたが、広く動員を募ったわけではありません。職員が顧問先への訪問時にご案内する程度の告知状況でしたが、多くの方に関心を持ってご参加いただけたと思います。

ほとんどの参加者から参考になったとの感想をいただきましたが、どちらかと言えば、インボイス制度より電子帳簿保存法改正によるペーパーレス化に興味を持たれるケースが多く、どのように進めていけばよいかと具体的な相談をいただいた参加者もいらっしゃいました。ペーパーレス対応のデータ保存については、自社サーバではサーバ容量の不足が心配だというご相談も多く、クラウドサービスへの関心も高かったように思います。

また、テレワークという働き方スタイルが定着してきている今、ペーパーレスは必須要件であり、その仕組みの構築やセキュリティ対策が急務であるという考えは浸透してきているようです。顧問先のペーパーレス化については、状況に応じて個別にご支援していきたいと考えています。

インボイス制度と
改正電子帳簿保存法への対応はセットで

Q : インボイス制度セミナーに「税務・会計のDXのポイント(電子帳簿保存法改正による税務・会計業務のデジタル化の留意点)」を加えた理由をお聞かせください。

A : インボイス制度導入と電子帳簿保存法は切っても切り離せない関係であり、両方を同時に満たしていくことを考えていかなければなりません。インボイス制度導入を契機として、請求書等のデジタル化(ペーパーレス化)は急速に進むと思われます。ペーパーレス化は、税務・会計の実務に直接影響する内容と捉え、2本柱のセミナーとしました。

例えば、領収書等がペーパーレス化されてデータ化できれば、会計システム等への仕訳連携が容易になり、入力作業は必要なくなります。さらに、領収書と仕訳の金額等をチェックするという突き合わせ作業もなくなります。領収書等の保存(ファイリング)作業も不要になり、電子保存されたデータはいつでもどこでも検索、確認が可能です。経理事務や総務業務のバックオフィス業務は、紙媒体から電子媒体に変わることで、大幅な業務の効率化や省力化をもたらすのです。正に「税務・会計によるDX」が始まると考えています。
※ DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)とは: 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
※ 出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」

Webセミナー開催風景

インボイス制度へのシステム対応には、
IT導入補助金を有効活用

Q : インボイス制度が中小企業のIT化に与える影響をお聞かせください。

A : 中小企業のインボイス制度へのシステム対応(IT化)については、まだまだこれから取り組む企業が多いのではないかと考えております。
今後、レジや販売管理システムの入れ替えを検討する場合は、インボイス制度に適合した請求書様式に対応するシステムの導入が必要となります。また、最近ではキャッシュレス決済にも対応していく必要がありますので、キュッシュレス対応も含めたIT化を検討しなくてはなりません。当事務所としてもこれらのシステム対応の支援を行う必要があると考えております。

また、システム導入に当たっては、IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)という助成制度が活用できます。この制度の審査においては、インボイス制度のITツール(会計システム・請求システム)を導入する場合、加点されることになっていますので、IT導入補助金の有効な活用提案も支援のポイントとなります。

※ IT導入補助金:中小企業・小規模事業者がITツール導入に活用いただける補助金です。https://www.it-hojo.jp/

電子帳簿保存法の改正で、
電子取引の電子データ保存が義務化

Q : 電子帳簿保存法の改正は、中小企業にどのような影響を与えるかお聞かせください。

A : 2022年1月施行の電子帳簿保存法改正のポイントは、
①承認制度の廃止(以前は、事前に税務署へ届け出が必要だった)、
②タイムスタンプの要件緩和、
③検索要件の緩和、
④電子取引の電子データ保存義務化です。
さらなるペーパーレス推進のため、手続きなどの簡素化がなされています。
ただ、④電子取引の電子データ保存義務化については、意外と周知されていない内容で、中小企業の実務において、与える影響の把握と対策が重要となります。

例えば、システムで作成した請求書等をPDF化してメール添付で授受する場合や、インターネットで購入した商品についてネットで発行された領収書をPDFでダウンロードする場合などは、「電子取引」に該当するので保存義務が発生します。今後、税務・会計のデジタル化(ペーパーレス化)を進めていく上で、それらの電子取引等の洗い出しを行い、効率的な業務フローを見直して電子データの保存方法やその検索対応などを前もって準備していくことが必要となります。
電子取引は多岐にわたるため、顧問先ごとに対応を吟味しながら支援していく予定です。

※出典:国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】

会計連携による業務省力化が
DXの第一歩

Q : 最後に認定支援機関としての今後のIT化支援への取り組みをお聞かせください。

A : 認定支援機関の税理士法人として、インボイス制度や電子帳簿保存法等への法改正への対応に限らず、中小企業のIT化支援には積極的に取り組む必要があると考えています。当事務所はDX推進委員会を設置しており、会計データに占める自動仕訳(他業務システムから連携する自動仕訳)の割合をいかに高めていくかを課題として取り組んでいます。

 また、インボイス制度は、電子インボイスに向かうことを意識しておく必要があると考えています。電子インボイスは、国際標準規格をベースとした日本標準仕様の策定を進める動き(※)も出てきており、動向を注視しています。

 今後、電子インボイスの普及が進んでくれば、現在分断されている「基幹業務システム」(販売管理システムなど)と「会計・税務システム」がシームレスに連携することから、バックオフィス業務の飛躍的な省力化・生産性向上が実現するのではないかと期待しています。
※ EIPA(電子インボイス推進協議会):https://www.eipa.jp/home

Webセミナー開催風景

[企業DATA]
税理士法人 報徳事務所
当事務所は、幕末の社会思想家・実践者である、二宮尊徳の中心思想、「報徳一円」から名前を戴き、全国282番目の法人として平成14年9月に設立。経営者には、本質を追及し存在意義を確立し、それを旗印とすることが一番求められているところです。そこで、当事務所は、税務・会計をベースとしながらも、疲弊した村々を立て直した尊徳のように、中小企業を元気にする経営革新支援など新たなサービス(経営計画の策定・IT活用による業績管理体制構築支援など)を実施し、その結果、日本の再活性化を実現していきたいと考えております。 (代表社員・理事長 赤岩 茂) 事務所ホームページより抜粋

【総本部】〒306-0234 茨城県古河市上辺見2120-2
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開業:2002(平成14)年9月
URL:https://www.houtoku-tax.com/free6

[経営革新等支援機関について]
登録年月: 2012(平成24)年11月5日
登録理由: 経営革新等支援業務 / 経営改善計画書策定